※ネタバレを含みます。
「正しさとは?」を考えさせられるお話だな、と思う。
2023年5月に発売されたばかりの、朝井リョウ『正欲』。
「何者」が発売された2015年、私は就活を控える大学生でした。
「正欲」を読んだのは今通っているビジネス塾でジェンダーに関する発表を控えていたころでした。
なんだか良いタイミングで朝井さんの作品を読めている気がします。
そして今回、映画も観てきたのであわせて感想メモ。
これは人間に対して性欲を感じない人が主人公のストーリー。佐々木くん(磯村勇斗)と桐生さん(新垣結衣)は、水に対して性欲を感じるという人たちです。
水が躍る姿に掻き立てられる人たちがいるという、 ”自分の知らない世界” があることを突き付けられる内容です。人間に性欲を抱かない感覚ってどんなのだろう・・と考えながら、それを世間から認めてもらえないと孤立していく悲しさが一気に押し寄せてくる感覚。
主人公たちを“異常”として跳ねのけるのが、検事の寺井(稲垣吾郎)。とても冷たくて非情な人間に映りますが、これが世間を代表する態度なんだとも思う。
普通に腹立つ。なんやコイツ!ってなる。
佐々木と桐生が手を取り合えたとき、「あってはならない感情なんてない」「ここにいて良いよって言われているみたい」と話します。
異端者という自覚から発せられた言葉だと思いますが、別に性の対象が人間でも、人とのつながりの中で自分を肯定してもらえること、認めてもらえることは必要だよな、と思ってしまうのはコロナ禍で人との関わり方が変化したからでしょうか。
個人的には「知らない世界を知る」という行為は楽しく前向きに取り組めることだけれど、それは結局のところ「自分に直接関係ない」と思っているからだと気づきました。
自分のパートナーがマイノリティだったら?
チームで仕事をする人がマイノリティだったら?
きっと捉え方は変わってしまうのが、今の自分だろうなというのが正直なところ。
世界ではLGBTQ+として男女差を超えた取り組みが盛んです。男女の概念が社会規範ですりこまれていて、そこから抜け出せていない日本の場合は性の対象が人間じゃないというのはまだまだ理解しがたい概念なのかもしれません。
サザエさん、ちびまる子ちゃんを喜んで見ているのが現実。
ただ、そういう人もいると「知っている」だけで見え方が変わるはず。
「きもちわる」と吐き捨てている人の方が、これからはマイノリティになる時代になるのかなと思います。
こんなことを書きながら、本当の意味で理解しているという状態ではないんだろうなー。
本当、というのも何が本当かわからないけど。理解の度合いなんて測れないからね。
いずれにしても、とりあえずは法に触れない範囲での「自分なりの正しさ」を持っておく必要があるなと感じました。
とりとめのないまま書いてしまった。なかなか難しいテーマですね。
あ、まだ本を読んでいない場合は映画を先に見ることをオススメします。
映画では端折られている部分があってこそ、話に厚みがでて面白いと思います。